yukkiebeer 2008-12-09
7 人中 5人 の方がこのレビューが参考になったと投票しています。
コッポラ、ペキンパー、タランティーノ、アルドリッチ、イーストウッド、キューブリック、シーゲルといったハリウッド映画の監督たちをとりあげ、それぞれの代表作品の撮影秘話を事細かにリストアップしながら、作品の見どころを詳述した一冊です。流麗で大変読みやすい文章で綴られていますし、また著者本人も「下世話でトリヴィア好きの体質」とあとがきで告白しているように、全編に大量に散りばめられた裏話の数々は興味がつきないので、一気呵成に読めました。
もちろんシネフィルにとってはどこか別の本で目にしたことのある話も多いでしょう。
まだ30代だったコッポラがその若さゆえに『ゴッドファーザー』の監督業に自信をもって臨めていなかったことは、私も以前読んだことがあります。
それでも本書を、強い力によって引っ張られるように読んだのは、ただ単に以前から見知っていたことをおさらいできるという意味だけではなく、著者流の読者を飽きさせない文章が、数々の映画の撮影現場を鮮明に眼前に立ち現せる力を持っているからでしょう。
そして本書を通読して改めて感じるのは、映画というのは正解のない世界であるということです。どんな脚本も完璧ではなく、撮影現場で日々修正の手が加えられる。そして加えた本人たちも、これこそが正解だと自身に時にブラフをかけなければ前へ進めない。
俳優の起用ひとつとっても、この俳優ではなくあの俳優でなければ100%ならないということはないはずなのに、それでもこの俳優であることが間違いないと自分に言い聞かせる必要がある。
映画監督と撮影監督、さらには製作者との、触れれば斬れてしまいそうな激しい確執も、どの者の言い分が正解であるとは絶対的判断は不可能。
そんな極度の緊張感を伴う作業の果てに差し出される映画を、私たちは何も知らずに楽しむ幸せを享受しているというわけ。そのことに思いが至る一冊でした。