suzushim 2009-12-27
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南洋の島アナタハンに漂着した30人の男とそこにいた一人の女性。彼らがその女性を巡って殺し合いを始めた特異な事件は、「アナタハン島事件」として、女性達が米軍に救出された後、国内でスキャンダラスに取り上げられ映画化もされた実話である。
小説「東京島」は事件にインスパイされた桐野夏生が、例によって巧妙な換骨奪胎で、「トウキョウ島」と言う架空の島を舞台に、現代日本の寓話に仕立て上げた野心作である。
日本人漂着者20数人が暮らす「トウキョウ」と、中国人の漂着者が暮らす「ホンコン」。「トウキョウ」の人々は、気のあった仲間同士で「オダイバ」「ブクロ」「シブヤ」などの集落に別れ暮らしている。正体不明の廃棄物が置いてあるため、「トーカイムラ」として恐れられているエリアもある。
「ホンコン」の人々が、生きることにタフで貪欲であるのに対し、「トウキョウ」の人々は、脆弱で無人島の自然に太刀打ちできず少しづつ破綻していく。その様子を、現代日本と現代中国の縮小された戯画としてみることはたやすい。
しかし決して読者を安心させてくれない桐野夏生は、そういった図式的な構図をどんどん破壊しながらストーリーを縦横無尽に展開していく。う〜ん、相変わらずサディステイックだぜ(笑)
桐野自身が描きたかったのは、やはり彼女の永遠のテーマである「女性のタフネス」であったと思う。
男たちが無人島の生活の中で、時に壊れ、時に安易な社会秩序作りに走る中、主人公の清子だけは現実を受け止め、自分が生き残ることだけを考えて予測のできない行動をとり続ける。
それは女性が本来持つ生命力を、極限状況の中で描き出してみたいと言う、作家の根源的な思いなのだろう。
最近の彼女の作品の中では、飛びぬけた名作とはいえないが、相変わらずのお手並みでした。