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ピアソンエデュケーション
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   情報工学の大学生、大学院生、技術者を主な対象として、ネットワーク・システムなどの分散システムについて説明した教科書・参考書で、著者のA.S.タネンバウムはコンピュータ・ネットワークやOS設計などの教科書執筆で著名だ。同僚と共著で2002年に発刊した『Distributed Systems: Principles and Paradigms』の翻訳が本書である。

   もともと大学上級生から大学院生向けの授業の教材だったこともあり、通信機構、プロセス構成、名前づけ方式、同期手法、一貫性、フォールトトレランシィ、セキュリティ、分散オブジェクトベースシステム、分散ファイルシステム、分散ドキュメントベースシステムと続く章立ても自然で理解しやすい。特にシステムの透過性(トランスペアレンシィ)を重視している。これは、異機種あるいは異ソフトウエアの環境でも、個々のシステムの差異をユーザから隠して、均一なサービスを提供するために不可欠である。

   翻訳では800ページを超え、中身もかなり細かく、部分的に難解であることは否めない。もともと、分散システムは集中型のシステムに比べてずっと複雑で難しいものであった。特にセキュリティに関する部分が難解で、システム利用者側からの視点ではなかなか十分なものにはならない。本書はシステム開発者の視点からの記述が多いため、効率よく機能を果たす方法により重点を置いた記述となっている。後半部では具体例を複数あげて、図9-24, 50のCORBA対DCOM、図10-54のNFS対Coda他、図11-35のWeb対ロータスノツのように比較対照表に整理して理解しやすくしている。

   分散システムは、数年で最新知識の多くが陳腐化する技術進歩の速い分野であり、本書の内容は基礎的なものが多いとはいえ、引用している参考文献の大部分が20世紀のものである点を考えると、楽観もできない。版を重ねるにしたがって、もっと分厚くなってしまうのではないかと心配な気もするが、現時点で得られる本として良い本であることは間違いない。(有澤 誠)