bek5150 2009-01-28
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フジテレビの人気ドラマ「のだめ」のヨーロッパ編だが、製作者側の努力だけでなく
それを受け入れたプラハ、パリの十分すぎるほどの協力を実感するドラマになっている。
誰も記載していないので敢えて記載するが、ドラマ版を見てなぜプラハ?と思う人
がいるかもしれない。実際、千秋真一が参加するプラティニ国際指揮者コンクールは、
小沢征爾(ウィーン国立歌劇場音楽監督)が優勝したブザンソン国際指揮者コンクール
がモデルと思われるが、場所はフランスである。事実、アニメ版はフランスが舞台に
なっている。
多分この「のだめ」の舞台がプラハになっているのは、フジサンケイグループの
キャニオンを通して、多くのCDが出ているのも関係しているのだろう。
プラハは日本にとってなじみ深い町だが、ヨーロッパの中で音楽のメッカという
わけではない。事実、フランスやドイツの音楽雑誌等では、チェコをヨーロッパの
片田舎という扱いで見ている傾向にある。
ただそれはチェコ特有の事情が反映しているのも事実だ。
チェコスロバキアは60年代に共産主義に反発して民主政権が誕生した。しかし
旧ソ連はそれに反発、チェコに進軍して、その結果共産党政権を復活させた。
いわゆる「チェコ動乱」事件である。
その結果、60年代前半とかEMIとか色々と録音があったが、この動乱がきっかけ
にほぼ撤退したようで、その代りに70年代初めに日本の「DENON」が、今では、
ポニーキャニオンが録音を展開している。
ただその一方で、旧オーストリア帝国圏にもかかわらず、スロヴァキア同様、
指揮者コンクールも含めた「コンクール」が見当たらない。「のだめ」で登場している
マーシャル(ヴィエラ先生役)とか優秀な指揮者が多いというのに。。。それは
民主政権後のスロヴァキアとの分離など、様々な政治的背景があるのかもしれない。
事実、旧ユーゴのような軍事衝突はなかったが、第三者では分からない側面が
あるようだ。
しかし、そういう複雑な事情があるにせよ、ここまで全面的な協力を得ると
いうのは、あまり聞いた記憶がない。それは、協力して作り上げるというヨーロッパ
気質も関係していると思う。
ドラマの後半部分で、のだめがフランスのお城でコンサートを開いているシーン
がある。そこで招待されたお客や主賓の人たちも、そのヨーロッパ気質の点で
考えると、とても興味深いと感じた。
主賓の城主は、これから活躍が期待される音楽家を支える気持ちが強く、
コネを生かして、様々なスポンサーをお客として招待しているのである。
実際、音楽家にスポンサーが付いているケースはさほど珍しい現象ではない。
例えば、シュトレーゼマンのモデルといわれている、世界的指揮者の
カラヤンもその一人。昔の話だが、ポゴレリチとチャイコフスキーの
ピアノ協奏曲を録音することになった時、まず、スポンサーにポゴレリチ
を紹介していた。
このケースは別に個人の音楽家だけではない。例えば、ウィーンフィル
が属している「ウィーン楽友協会」は名前のとおり、スポンサーの資金
で運営されている自主運営団体である。
音楽家は、別に才能だけで成功しているのではない。協力者あっての姿な
のである。協力者は、別に贅沢を楽しんでいるわけではないのである。
指揮者コンクールの二次予選で落ち込んでいる千秋を観客の一人が励ます
なんてやらせ?と思うかもしれないが、「音楽を協力して作り上げる」
という考えでみると、実に自然な話だと思う。また初コンクールを成功させた
のだめに対し、うちのサロンパーティーにも…と声をかけたシーンも、
なるほどと思う。
ただそれらのシーンは、ともに日本にあまりなじみのないシーンであり、
「音楽を協力して作り上げる」という考えが浸透していないと、何か唐突な
イメージがあるのかもしれない。そのため、この重要なメッセージが伝わって
いないのかな?と思われる事件も発生している。たとえば、のだめを見た日本人
観光客がパリで落書きするというトラブルもその1つだ。
しかしそれは根本的に「のだめ」を作った作者や製作者側、及び協力してくれた
誠意に反する逸脱行為であり、決して許される行為でないことを強く認識しても
らいたい。
ドラマのストーリは、ハチャメチャな部分は残しているものの、全体を通して
誠意をもって作り上げている印象がある。
ただ前述のとおり、本来の意図が日本人特有の感性に遮られて、必ずしも巧く
伝わっていない部分があるためか、例えば国際指揮者コンクールが単なる勝ち負け
に見えているのでは?という疑いが残る。ただこういった部分は、概して当事者の
言葉でフォローする姿勢を貫いている。国際指揮者コンクールを例に挙げると、
千秋が最後にコンクールの感想を語っていることで、単なる勝ち負けではないこと
を伝えるようにしている。それが、どこまで視聴者が理解しているのか、その点は
分からないが…。
国際指揮者コンクール終了後の後半部分は、「アナリーゼ(楽曲分析)」がいかに
重要か、よく分かるドラマ構成になっている。その点で考えると、うまく選曲してい
るとと思う。
ただシューベルトのピアノソナタ第16番は、ドラマで演奏されている部分だけを
聴くと、穏やかで抒情的な側面を強調しすぎている気がする。個人的には、シューベ
ルトらしい躍動感を感じる部分があってもいいのではないかと思う(実際そういう
演奏もある)。ただドラマの流れにはマッチしていると思う。のだめがフランスに
来て初めて弾くラヴェルの曲は、選曲自体は問題ないと思う。しかし、少し浮足立って
いると感じるのは、果たしていいのかな?と思う。ラヴェルの一面性を強調する結果
になるためである。そのため、個人的には少し違和感を感じた。
ちなみにコンクールで登場している管弦楽団は、テロップで書かれているとおり、
「プラハ放送交響楽団」である。この管弦楽団は、チェコフィルほど有名ではないが、
実力は折り紙つきであることはお聴きのとおり。いくらヨーロッパ気質とはいえ、
ここまで協力してくれているというのは、正直、感動してしまった。団員の誠意や
演技にも賞賛を送りたいと思う(一部は単なる俳優がいるが)。